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イデアなひととき
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自分らしく生きるとは?序章!

 

  日本を代表する俳優である「仲代達也」さんは、「無名塾」という俳優養成所を主宰されている。そして、全ての運営費は彼の私財で支えられているという。そんな「無名塾」の名前の由来を私は誤って捉えていた。
「無名の若者たちよ!来たれ!!」かと思っていたが、実は「無名塾」出身で大活躍している俳優たちに、“無名”の頃の自分に戻って、「帰り修行」をする場所を提供するという意味なのだそうだ。

  「仲代達也」さんが、優秀な俳優たちを数多く輩出しているニューヨークの「アクターズ・スタジオ」を訪れた時、何とあの世界的に有名な男優「ロバート・デニーロ」がレッスンに汗を流していたという。驚いて訊ねる「仲代」さんに、インストラクターはこう言った。「アクターズ・スタジオ出身の俳優たちは、必ず年に何回かは、自分の演技や“引き出し!”を確認し、身に着いてしまった垢を落とすために、“帰り修行!”にやってくるのよ!」。 人は、自分の“存在価値”を自己主張するために、自分なりの“引き出し!”を増やすことに腐心する。もし“自分らしさ!”を表現できる“引き出し!”をいくつか持てれば、それだけで或る意味“一生喰える!”と考えるからだろう。ところが、そう考えた瞬間にそこから先の人間的成長は、止まってしまう。「帰り修行」とは、常に“無名時代!”の自分に戻り、知らぬ間に身に着いてしまった“悪癖!”や“人間的な臭み!”を削ぎ落として、新しい皮袋に新しい酒を盛ることなのだろう。ここに“自分らしく生きる!”ことの原点がある。

  さて、“自分らしく生きる!”ことを考えた時、私にはどうしても忘れ得ぬ人がいる。その人「臼淵大尉」は、まさにその瞬間、片道分の燃料しか積まずに死地である沖縄に向かう「戦艦大和」の船上にあった。終戦直前、“航空機による攻撃”により“大日本帝国海軍”は、既にその主要艦船の大半を失っていた。そして、航空機や空母による“制空権!”こそが勝敗の鍵となる“近代戦!”において、大艦主義の象徴である「戦艦大和」は、存在意義を全く失ってしまったのである。戦争の残酷さは、まさにここに有り、多くの将兵を乗せたまま「戦艦大和」は
“死に場所!”を探す航海へと向かうことになった。船上ではプロの兵士とも言うべき「職業軍人」と、赤紙一枚で徴兵された兵士たちの間で、自分たちが置かれた立場について、激しい議論が繰り返されたという。説得力の無い「皇国、神風論」を振り回す「職業軍人」と「犬死だ!」と喚く一般兵士たちの間で、一触即発の雰囲気になったその時、「臼淵大尉」はこう言った。「敗れて目覚める。それ以外にどうして日本が救われるか。今、目覚めずして、いつ救われるか。俺たちは、その先導となるのだ。日本の新生に先駆けて散る。まさに本望じゃないか!」聞き入る皆の目に、光が戻ったという。

文 国影 譲

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