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イデアなひととき
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輝く星座の囁く時に

 

7歳の頃、親に連れられて生まれて初めて渋谷の“東急文化会館”にあった「五島プラネタリウム」に行き、そして“星の世界”に引き込まれることとなった。ドームの真ん中には、まるでロボットのような最新鋭の投影機が据え付けられ、「五島・星の会」の中でもベテランといわれる解説者が、専用ブースでそれを自由自在に動かしながら、耳に心地よい“自然な解説”を進めていく。リクライニングシートに深く腰掛け、直接ドームの天井が見えるように背もたれを倒すと、外はまだ明るい昼間だというのに、ドームの中は徐々に“暮れなずむ時”を迎え、太陽は西の方角に沈んで行った。

“東急文化会館”の屋上から見えるという「東西南北」の景色が「プラネタリウム」の丸いドームの中に“黒いシルエット”となって浮かび上がり、“夕焼け”の“紅”が、やがて自分の指先すら全く見えないほどの“漆黒の闇”に移り変わっていく。頭上にはもう“降るほどの星”が瞬き出している!「いったい、いくつの星が出ているのだろう?」と目を凝らしても、「天の川」との境は茫洋として、目に定かではない。そして次の瞬間、解説者は「“春の星座”はこんな感じで出ているんですよ!」と言いながら、それらの星々に「星座の絵」を重ね合わせていった。子供にとっては、“空に輝いている星々”に直接「星座の絵」を投影するという行為が、本当に衝撃的なことだった。その後、何度も夢の中で“その光景”を見たほどだ!

天空に輝く星々の中でも、特に明るい星と星を繋いで、「ギリシャ神話」に登場する“人間”や“神”、“動物”や“道具”などの姿を重ね合わせたもの、それが「星座」である。現在、世界で共通して定められた「星座」は、全部で88個あるが、北半球では見ることが出来ない「カメレオン座」や「八分儀座」などの「星座」が9個あり、日本で見られるのは79個ということになる。

“春の星座”で特に有名なのは「おおぐま座」と「こぐま座」だろう。その物語は、こんな内容だ。アルカジア国に住む“森の妖精”「カリスト」は大変に美しく、“万能創生の神”である「ゼウス」との間に「アルカス」という男の子をもうけた。これを知った「ゼウス」の妻である「ヘーラ」は嫉妬に狂い、「カリスト」を森に住む“大きな熊”に変えてしまった。長い時が経ち、ある日、熊に変えられてしまった母「カリスト」は、森の中で立派に成人した息子「アルカス」に出会う。母は、息子を抱きしめたいと思い、彼に近づいて行ったが、彼には“大きな熊”が自分に襲い掛かってくるようにしか見えない。息子「アルカス」が、手に持っていた“弓”で、今まさに熊に姿を変えられた母親を殺そうとした刹那に、「ゼウス」は彼を小熊の姿に変えて天空に上げた。「こぐま座」はこの息子「アルカス」、「おおぐま座」は熊の姿に変えられた母「カリスト」なのである!

文 国影 譲

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