トップページ  >  “イデア”なひととき
イデアなひととき
line6px
和紙の奥に広がる世界!

 

  日本で生産され海外にも輸出される“商品”の中で、最も国際シェアの高いものは何か、皆さんはご存知だろうか。パーソナル・コンピュータの中に必ず搭載されているコンデンサー(蓄電器)の“絶縁”には絶対に欠かせないもの、それが日本で作られた“和紙”なのである。つまり、もし“和紙”が無くなってしまったら、世界中からパソコンが消えてしまうということになるのだ。

  “和紙”という呼び名自体は実は比較的新しく、明治時代になって手漉きの“紙”すなわち“和紙”と、機械漉きで木材パルプを原料とした“洋紙”を、区別する必要が生まれた後の事である。“和紙”は、楮(コウゾ)や三椏(ミツマタ)、ガンピなどの植物から取り出した“繊維”を、トロロアオイという植物から取った“粘液”に混ぜて、簾桁(すけた)という日本独自の伝統的な道具を使って「流し漉き(ながしずき)」して出来上がる。紙の製造技術は飛鳥時代に「曇徴」という僧侶によって中国から日本に伝えられたらしいが、これに日本独自の技法や原料を使って改良が加えられ、伝来以来1500年以上経った現代でも、素晴らしい“和紙”が作り出されている。

21-15  完成するまでに「火」と「水」と「植物」と「人間の手」しか使っていない“和紙”は、究極の“エコロジー製品”と言えるだろう。それ故に、“和紙”の持つ風合いは、「人間と自然の間を埋めるのに持って来いなもの」なのだ!建立以来、千年以上を経た木造建築の、室内と外界を隔てる唯一のものが障子に貼られた“和紙”一枚であることも多い。“和紙”の大きな特徴である“透光性”は、外界の強い光を“和紙”の繊維が和らげ、室内にいる者にとって心地良い明るさにしてくれる。また、その“通気性”は、“四季の変化”や季節の持つ“独特の香り”が室内に流れ込んでくる事を妨げない。“和紙”は、あたかも自然の呼吸と同期しているような、優しさと暖かみを感じさせてくれる。

  先日、「ラリック美術館」に行った時、アール・デコの旗手である“ルネ・ラリック”のガラス製品と、江戸時代に流行った文様が印刷された“和紙”が同じ空間に展示されていた。ガラスの表面に浮かび上がる文様も“和紙”の文様も双方とも“自然”を表したものであり、違和感が無いどころか、まるで同じ“氏素性”であるように溶け合っていた。それらはまさに、“ガラス”と“和紙”が、それぞれの時代の“最先端の感性”を写す“最先端の媒体”であったことを感じさせたのである。

文 国影 譲

≪前のページへ | 次のページへ≫ ▲このページのトップへ