トップページ  >  “イデア”なひととき
イデアなひととき
line6px
人形のいる風景!

 

  人形には、見る者をして“感動の渦”に巻き込む“力”がある!それは、単なる人間の“縮小版”ではなく、“人形作家の生き様”と、そこに込められた“魂の香り”がする“特別なもの!”だからだ。

  「北の国から」の脚本家、倉本聡氏が、北海道富良野の樹海に住むと言われる「ニングル」という妖精たちについての“フォトストーリー”を作られたとき、「ニングル」を具現化したのが「与勇輝(あたえゆうき)」氏だった。本来、文章が巧い脚本家がフォトストーリーを作ると、“文章”と“具現化されたもの”が干渉しあい、なかなか良い結果が生まれないことが多い。

  ところが、この人形作家が生み出した「ニングル」は、単なるリアリティを超えて、“これこそが実物だ!”という納得性があったのである。3頭身でありながら、“バランス”のとれた体。20cmほどなのに“実在感”のある姿。妖精だけが持つのであろう“透明感”。いずれも、「風・森・水、悠久なるものへの“想いを!”」という、倉本氏が読者に伝えたかったコンセプトを、余すところ無く具現化したものだった!そして今、私、国影が見る限り「与勇輝」氏は、“男性的な感性”で、“ほのかに憧れる女性”を“人形”にすることが出来る作家だと思われる。

  全く逆に、“女性的な感性と繊細さ”で、“女性が憧れる女性像”を作ることが出来る人形作家が「辻村ジュサブロウ」氏なのではないか。辻村氏は40歳の時、NHKの人形劇「南総里見八犬伝」の“人形たち”を製作して、一躍、その“人形作家”としての新境地を確立された。三十数歳の頃、文楽の人形師を目指された辻村氏が、師弟関係にあった紋十郎師匠の忠告に従い、“文楽の内側”にいるのではなく、“外部から文楽を見る”立場に身を置かれたのは、ご本人はもとより、我々皆の幸せだったのではないか。

  NHK「南総里見八犬伝」の“人形たち”は、文楽・人形浄瑠璃の人形たちと似た表情をし、“歌舞伎の隈取り”まで取り入れた斬新なものであった。とにかく登場人物の多い“八犬伝”で、それぞれ個性的な外見を持たせるだけでも、至難の技であったと思うが、これを難なくこなし、更にそこに“遊びごころ”や“人形作家”の喜びまで表現してしまう辻村氏は、やはり天才の名にふさわしい。このところ、“西洋嗜好”から“日本古来の美意識”に軸足を移され、更に、女性陣が抵抗感を持つのではなく、憧れすら抱くような“妖艶なる女性”の人形が増えているのは、まだまだ創作の幅が広がっている最中であると感じさせる。

文 国影 譲

≪前のページへ | 次のページへ≫ ▲このページのトップへ