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イデアなひととき
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コレクター魂の咆哮(上)

  自分が気に入った“もの”を、自分の身近に集めたいという欲求は、人間の本能に根差していると言われる。
それは、原始時代に始まる“狩猟本能”なのかもしれないし、“武器”によって外敵から身を守るための“自己防衛本
能”、或いは“化粧”や“ファッション”と同様に、“自己顕示欲”の発露である場合も考えられる。しかし“物”が捨てられ
なくて、“物”に埋もれて暮らしている人は「コレクター」というよりは、精神病理学でいう“強迫観念”(今、これを捨て
ると後で欲しくなっても二度と手に入らないのではないか等。)に陥っている場合が多く、一刻も早く「断捨離」の
お世話になって、もっとシンプルで、快適な生活を目指すべきだろう。

  「コレクター」とは、“捨てられない!”という“受動的”な理由で“物”が集まる人々ではなく、“能動的”に自らの“金”
と“時間”と“労力”を惜しげもなく投入すると同時に、それが対価を期待した“経済活動”でないことが求められる。
また、「コレクション」とは、たとえその“もの”が、元々は日常生活の中に存在していたとしても、「コレクション」に
なった瞬間に日々の暮らしとは“隔絶された存在”になることを意味している。例えば、自分を飾るため、或いは
オークションサイトで高く売却するために、高価な腕時計を何点集めても、それは「コレクション」ではない。あくま
で、「コレクション」は“日常生活”や“経済活動”の“外側”にあるものなのである。

twoonelife43  数年前、六本木にある“森アーツセンターギャラリー”
に、「レオナルド・ダ・ヴィンチ」の手稿(直筆による原稿)である「レスター手稿」を見に行った。「レスター手稿」は1505年から1508年にかけて、“科学者”であり“数学者”、そして何より偉大な“芸術家”として名を馳せた「レオナルド・ダ・ヴィンチ」が、“天文学”、“流体力学”、“地球物理”などについて、自らの深い考察を“鏡面文字”(鏡に映さないと判読出来ない不可思議な文字)とデッサンによって書き記した72枚に及ぶノートである。“紙”は経年劣化により、いつかは埃となって、消え去る運命にある。“インク”もまた紫外線によって退色し、いつかは判読不能となってしまうかもしれない。本来は、門外不出の“人類の宝物”として倉庫の奥深く、或いは銀行の貸金庫に眠るべき代物なのだろう。だからこそ、この「レスター手稿」は、1年に1度、1カ国の1ヵ所でしか公開されない超貴重品扱いになっているのだが、驚く事にこの素晴らしい資料は“個人所有”の「コレクション」の一部なのだ。その持ち主とは・・、マイクロソフト社の創業者「ビル・ゲイツ」氏である。その「コレクション」は個人的に独占されることなく、全世界の人々に閲覧の機会が提供されている。

  賢明な読者は、もうお気づきのことと思うが、今回“物”と“もの”という表記は厳密に区別される。なぜなら、「コレクター」は形の無いものを対象として「コレクション」を形成することもあるからだ。次回は、そんな話題を!

■コレクター魂の咆哮(中)は、こちら>>
文 国影 譲

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