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一期一会のある暮らし
匠の技と木の魅力
(上)

ichigo03-01  アメリカは“コンクリートの文化”、ヨーロッパは“石の文化”、中国は“レンガの文化”、だとすれば、さしずめ北欧と日本は“木の文化”であると言えるだろう。「蘇る和の心」でも書いたように、自然との“共存共栄”こそ、日本人の原点である。その意味でも、生き物である植物を使って住宅を建て、また、身の回りの物を作るのは、日本人にとって当然の帰結だったのではないか。

  “耐久性”と“弾力性や加工の容易さ”、更に“美しさ”を兼ね備えた素材として“木”が持つ魅力は、我々にとって計り知れないほど大きい。住宅にしても、家具や小物類にしても“木”の持つ“暖かみ”がもたらす「安堵感」は、日本人のDNAの中に確実にある。“木”から受ける恩恵に、素直に感謝出来るのは、日本人と“木”の間に培われた“永い歴史”があるからだ。“木”は自ら呼吸する。そして動物よりはるかに永い時間をかけて成長し、又、土に帰っていく。この「土に帰るまでの間」だけ、我々人間と、共に過ごそうということが、実感として理解出来るのが我々日本人だと思う。なにしろ、我々の先祖は“木”にも精霊が宿ると信じ、それが信仰の対象となったぐらいだから。日本の名だたる「仏師」は、彫り出す前の“木片”に、既に“仏”が見えるのだという。“木”が、早く“仏”の姿になりたいと「仏師」に語りかけるのだそうだ。

ichigo03-02  “木”の声を聞きながら仕事をする。それが、本当の“匠の技”というものなのかもしれない。

  京都の名旅館と言えば、「俵屋」、「炭屋」、「ひいらぎ屋」が有名だが、庭や懐石料理と並んでその大きな魅力は、“檜”の風呂であろう。“木”だけが持つ「肌触り」の良さと“檜”の爽やかな香りは、胸のすく思いがする。“木”の生命力と自分の中にある生命力が共鳴しあって、新たな力が湧き上がってくるのを感じる。きっと我々の先祖も大変な一日の仕事を終えて、“木”の湯船にとっぷりと浸かり、明日もまた頑張ろうと思ったのだろうなと。

  同じ京都の「東寺」では、国宝の「五重塔」が昨年12月に一般公開された。

  火災で焼失したのち、西暦1644年に再建されてから幾度となく大きな地震に遭いながら、全く傾くこともなく建物自体に被害がなかったことに対して、西欧諸国の建築家から驚嘆の声があがった。木造建造物はもろいのではないかという先入観とは全く逆に、しなやかに耐えた秘密に迫ろう。