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一期一会のある暮らし
皆、大好き!「もぐもぐタイム」

2018年2月24日午後2時、韓国平昌冬季オリンピックで「氷上のチェス」とも言われる女子カーリングの、三位決定戦が行われようとしていた。北海道の「LS北見」の選手たちで構成された日本チームが、第一次予選では敗れた英国チームと再度対戦することになったのだ。そして、それまでの試合と同様に、一試合約3時間という長丁場を闘う選手たちの、栄養補給とコミュニケーションを取る為にハーフタイムに用意されていたのが「もぐもぐタイム(おやつタイム)」だった。北海道名産のお菓子や真っ赤なイチゴを“もぐもぐ”食べながら後半戦の作戦を話し合う選手達には、試合特有のギスギスした感じや悲壮感は無く、かえってたくましさを感じた。その予想通り、彼女達は英国に勝利し、日本の女子カーリング界に初めてとなる冬季オリンピック銅メダルをもたらしたのだった。

“おやつ”とは、江戸時代、日本人の食事が朝晩二食だった頃、仕事が忙しく昼寝も出来ず小腹が空いた時に、中食(ちゅうじき)、間食(かんじき)、小昼(こびる)などと呼ばれる、間食を摂るようになった事に始まったと言われている。“やつどき”、つまり午後2時から午後4時までの間に食べるのが一般的だったため、“おやつ”と呼ばれるようになったという。ただ現代と同じように、日常の食事とは異なる“楽しみのための食事”として“おやつ”が用意されるようになったのはもっと歴史が古く、奈良時代まで遡るらしい。唐(今の中国)から唐菓子や砂糖が伝わり、宮中でお菓子が食べられるようになった。宮中の行事などを記した“延喜式”には、貴族が通常の食事の合間に食べる“間食(かんじき)”として寒天や砂糖を使ったお菓子が載っており、「間食は楽しい時間だ!」という感想が記されているという。また、安土桃山時代には千利休によって“茶の湯”が確立されるとともに、その場で供せられる和菓子が一般庶民にも“おやつ”として広まったという経緯がある。その後も、海外から“カステラ”や“金平糖”などが日本に伝わり、従来の“おやつ”である“煎餅”や“団子”、“餅”や“果物”などと共に日本人の“おやつ文化”をさまざまに彩っていったのである。

世界に目を転じると、英国の“おやつ文化”である“アフタヌーンティー”が有名だ。 “アフタヌーンティー”は、1840年頃にベッドフォード公爵夫人である「アンナ・マリア・ラッセル」によって始められたとされる。午後3時から5時にかけて小腹が空く頃に、紅茶と共にサンドウィッチやスコーン、ペストリー等を頂き、友人たちと語らいながら優雅な時を過ごしたという。元々は、貴族階級の夕食が、観劇やオペラ鑑賞、夜の社交パー
ティーなどによって午後9時以降になってしまい、空腹に耐えきれず、事前の腹ごしらえをしたという事らしいが。
“おやつ”という響きには、人の心をわくわくさせ、癒し、穏やかにする効果が有るのは間違いない。みんなが気に入った“おやつ”を、気の合う仲間たちと楽しく語らいながら食べる時、いらぬ緊張感はほどけ上質のコミュニケーションを取ることが出来るようになる。何かを食べるだけ、或は何かを話し合うだけでは得られない、優雅な時間を“おやつ”がもたらしてくれるという訳なのだ。