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一期一会のある暮らし
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赤ちゃんは、何故四六時中“泣く”のだろうか。おしめが濡れたから?お腹が減ったから?寂しいから?最近の研究では、常に周りの大人達から忘れられないように「私はここに居ます!」等の自己主張の意味合いが強いという説も有る。人が“泣く”には様々な理由があるが、“泣く”ということが、自分の内面にも周囲の人々とのコミュニケーションにも、影響を与えるのは間違いなさそうだ。
私自身還暦を過ぎて、一層涙もろくなってしまったという自覚症状があるのだが、特に映画や演劇、スポーツ等で、主人公が悲しい目に遭ったり、ひたむきな努力が報われたり、或は如何ともし難い“別離”が訪れたりといった場面を見ると「涙」が止まらなくなる。また、正直に言えば、自分はこんな場面で“泣く”のかと自らの「涙」に驚いたり、“泣いた”後に、妙に頭の中がすっきりしたと実感することもある。どうやら「涙」は、単なる感情の発露というだけではなく、脳や精神、ストレスに対しても、非常に大きな影響を与えているらしいのだ。

米国ミシガン大学教授である「ウィリアムH・フレイ」博士は、元々は“人口統計学”の専門家だが、「人間はなぜ泣くのか?」という研究でも有名だ。彼の 研究によると人が情動的に“泣く”時、その原因の割合は悲しみや悔しさが5割、喜びが2割、怒りが1割で、同情、心配、恐怖がこれに続くのだという。そして何より注目すべきは、彼の調査の結果、女性の85%、男性の73%が「泣いた後、すっきりして気分が良くなる。」と答えたことだ。この結果から「フレイ」博士は、「涙」を流すことに、ストレスを解消する働きが有るのではないかと考えた。

人の心の安定は“交感神経”と“副交感神経”のバランスに依って保たれている。 この二つの神経のうち、“交感神経”が活発に働き過ぎると、身体が一種の興奮状態となって、一気にストレスが溜まったり爆発したりする訳だが、実験の結果、そんな時には、「涙」を流すことによって「セロトニン」という神経物質が多く分泌されることが分かった。「セロトニン」は別名“幸せホルモン”とも呼ばれ、身体をリラックスさせるばかりでなく“副交感神経”自体に作用してストレスによって乱れた自律神経のバランスを、元に戻す働きがあるということが証明されている。更に、ストレスやホルモンバランスの乱れが原因で発症すると言われる“うつ病”の症状改善にも、「涙」を流す事が大きな効果をもたらす事が分かったという。こうして「涙」の効用が明らかになったため、私達も積極的にこれを活用すべしという動きが、精神カウンセラーなどの間で広まって来ている。世間では、年齢が上がると涙もろくなるなどと言われてきたが、実は逆に年齢と共に“泣くこと”が恥ずかしいと感じる方も増える傾向があることも判明した。40~50代の女性では1ヵ月間近く「涙」を流していない方が4割以上おられるという調査結果もある。男性の場合は“男は簡単に泣くものじゃない!”などという風潮ゆえに「涙」をこらえる方も多く、それが原因でストレスに弱いとも言われている。厳しいストレスにさらされる私達現代人こそ、もっと真剣に「涙」の効用を自覚し、気持ちの良い「涙」を流す努力が必要なのではないだろうか。

 


文 国影 譲

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