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一期一会のある暮らし
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  英国の有名な“女性推理作家”「アガサ・クリスティ」が生み出した名探偵「エルキュール・ポアロ」は、常に“灰色の脳細胞”を駆使して難事件を解決すると書かれている。ここで言う“灰色の脳細胞”とは“冷静沈着”、“冷徹”“集中力”などの代名詞だろう。“頭寒足熱”とか英語の“Cool(頭が良い)”などという言葉からも、頭の中(もちろん“脳”のことだが)は冷えている方が良く働くというイメージがあるかもしれない。ところが実際は人間の“脳”には1分間に約750ccもの温かい血液が常に流れ続け、“脳”自体は体重比にしてわずか約2~2.5%前後の重さ(約1300g~1600g)しかないのにも関わらず、何と基礎代謝全体の約20%という大量のエネルギー(1日に約300?)を消費するらしい。一説によれば、プロの棋士は対局中、ほとんど身体を動かさないのに“将棋一局”を終えると、体重が2~3㎏減るという。

  また他の臓器は“ブドウ糖”や“タンパク質”、“脂肪”など、どの栄養素でもエネルギーとして利用出来るのに対し“脳”だけは“ブドウ糖”と“ケトン体”しかエネルギーとして利用出来ない“超偏食”で“大食漢”な臓器なのである。

  さて、つい最近まで人類にとって“脳”は、まだまだ未知の領域だった。今でも“脳”のどの部分が、どのような役割を果たしているのかさえ、完全には突き止められていない。また身体の各部位に対して、どうやって“命令伝達”しているのかも完全解明されたと言うには程遠い。ただ、世界中の“脳科学者”が懸命に研究に取り組んでくれたお蔭で、ようやく解かってきたこともある。今回は、そんな最先端「脳科学」の世界を少しでもお伝えしてみようと思う。今年の9月15日現在、我が国における65歳以上の人口は、実に全人口の27.3%に当たる3,461万人(4人に1人以上!)となった。どんどん進む高齢化は“アルツハイマー病”や“認知症”といった“脳”に関わる諸病の危険性を我々に強く感じさせるようになった。何とか予防出来ないだろうか、或は何とか症状を改善することは出来ないか等、もちろん高齢者ばかりではなく中年層に至るまで、そうした意識が非常に高まった。それは、アンチエイジング(“老い”との闘い!)の中でも、最も身近で重要なテーマであると言えるだろう。

  多くの人々のそんな“想い”は、「脳科学」という分野の活動に大きな影響を与え、我が国でも“格段の進歩”と“一種の流行”をもたらしたのである。

実は、“脳”という臓器には、他の臓器と比べて明らかに異なる性質がある。それは“脳”に対しては“人間の意志”や“心の動き”が物理的にも影響するということだ。最先端の「脳科学」では、“脳”には“可塑性(“脳”に対し、“運動”や“学習”、“瞑想”などの具体的な行動をとることによって、自分の思ったように機能させたり、形作ることが可能だという意味)”が有ると言われている。だからこそ「脳科学」では、“生理医学”的なアプローチだけではなく“精神医学”や“社会心理学”の面からの研究も必要とされるという訳なのだ。次回は「脳科学」の“キーワード”を中心に、より詳しい話をしたい。