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一期一会のある暮らし
「活字文化」復権の時!

  以前にも書いたが、作家「寺山修司」は若者に「書を捨てよ、町に出よう!」と呼び掛けた。これは、
“理論” に埋没して “実践” の伴わない若者たちに
“行動” の重要性を伝えようとしたものだった。しかし時が移り、今度は若者たちに深刻な “活字離れ” が
叫ばれるようになった。理論どころではない。「本」
も「新聞」も全く読まない、活字に触れようとしない
“新人類” が増えてきたのである。インターネットや
スマートフォンの普及で、湯水のように流れ去る
“文字” は、日常生活に溢れかえっている。しかし、
それを何度も読み返し、その意味を咀嚼し、「読書百遍、意自ずから通ず!」とばかり「活字」の世界に埋没し、「活字」の世界に遊び、“想像力” を駆使して「活字」の持つ “色” や “香り” を楽しむことが、若者の間で “流行らなくなって” しまったのだ。

  もう “読書” の持つ “エンターテインメント性” は死に絶えてしまい、若者には見向きもされないようになったのかと思っていたところに、今回の「又吉直樹」氏の「火花」の出版騒動である。もともと、最も安価で最も上質なエンターテインメントは “古本屋” で買う “文庫本” だと公言してきた私だが、さすがに電車に乗って、前に座っている乗客全員がスマホを凝視しているのを見ると、もう「本」の世界は終わってしまったのだと思っていた。しかし、どうやらそうではないようである。書いた “作家” に、或は書かれた “作品” に魅力があれば、それをきっかけに「本」を読んでみたいという人々は数多くいることが立証されたのだ。天下の「文芸春秋社」が発行しているとは言いながら、文芸雑誌「文学界」の発行部数は2011年に公証10,434部で、直近の数字は1万部を切るレベルだったようだ。ところが、“お笑い芸人” というジャンルに身を置きながら2000冊以上の文学作品を読破し、若きインテリの雰囲気を感じさせる「又吉」氏の “前評判” が奏功したのか、彼の作品「火花」を掲載した巻は、予約だけで4万部を超えたと聞いた。そして、単行本となったその「本」は、35万部を超える大ベストセラーとなったのである。

  ここで重要なのは、ミーハーぶって「又吉直樹」氏を持ち上げることではないだろう。2000冊を超える “読書” が彼にもたらした
“情景描写” の巧みさと、“引き出しの多さ”
こそが重要なのだ。いつだったか、繁華街を歩いていると、新入社員と思しき若者が、ちょっと年上の先輩に向かって「あれって、琴線(ことせん)に響きますよね!」と得意げに話しているのを聞いた。かなり大きな声であることが、彼の自慢げな顔とマッチして滑稽である。そりゃ “ことせん” じゃなくて
“きんせん” だろ!それに “響く” じゃなくて
“触れる” だよと。でも、その先輩もニコニコするだけで “会話” は大気に吸い込まれてしまった!少しでも背伸びをする、その心意気や良し!でも、もう少し「本」や「新聞」を読もうよ!今や理科系の “学術論文” を書くときでさえ、かなりの “国語力” を必要とすると言われる時代なのだ!この “世界” には「本」を読むことでしか養えない “知性” と “人間性” が間違いなく有るのである。