トップページ  >  一期一会のある暮らし
一期一会のある暮らし
言葉の魔法に掛けられて
(上)

ichigo55_01  “言葉”を紡ぐことを生業(なりわい)とする我が身としては
“言葉の持つ力”が、多くの人々の心を前向きにしたり、魂を揺さぶったり、大きな感動をもたらす事を強く信じている。実は古来より、日本では「阿吽(あうん)の呼吸」であるとか
「言わずもがな」、「言わぬが花」、「以心伝心」といったような“言葉”を使わない“意思疎通”を上位のものとする価値観
があった。現代でも、スポーツ等でよく言われる“アイコンタクト”こそが、最高の“コミュニケーション手段”という考え方がある。しかし、読者の皆様には少しお待ち頂きたい。恋愛中のカップルは勿論のこと、数十年にも及ぶ結婚生活をお過ごしの皆様でも、ご経験がおありだろう。わずか30cmしか離れていないにもかかわらず、相手が何を考えているかなど“言葉”に出して言ってもらわなければ、決して分かる訳が無いということを。欧米のように、朝に晩に「愛しているよ!」と言わなければ“離婚沙汰”になるというのも、日本人にとってはいささか気が重いが、“言葉”でなければ相手の心には通じないというのもまた真実であろう。ましてや、他人同士が“言葉”無くして“意思疎通”を図ることなど、ほとんど不可能と言ってよい。何も言わなくても相手は自分の気持ちを絶対に分かってくれている筈という“幻想”が、とてつもなく深刻な結果をもたらすことは、洋の東西を問わず、人類の長い歴史が物語っているではないか。

  日本ではまた、「阿吽の呼吸」と対極を成すものとして、「言霊信仰(ことだましんこう)」とか「愛語(あいご)の精神」という考え方がある。「言霊」とは「言魂」とも書き、“言葉”が“人の心の動き”に対して強い力を持つことを指している。“霊”などという字が付くと何やら怪しげな雰囲気が漂うが、実は“良い言葉”が精神に与える“好影響”に着目し、“前向きな言葉”や“勇気が出る言葉”、或いは“心洗われる言葉”を選び、意識して日頃から使いなさいという人生の指針と言っても良いだろう。「愛語の精神」も基本的な部分は同じで、“美しい言葉”を意識的に使うことに拠って、人格形成に良い影響があるという仏教の教えから来ている。精神医学的な見地からも、自分の口から出た“良い言葉”が、再度自分の耳に入ることで、意識の中に好ましい形で“増幅”されていくのは、ichigo55_02ある種の“自己暗示・自己催眠効果”であると解釈されている。

  最近、予備校の先生が「いつやるか?」、「今でしょ!」というフレーズで、一世風靡されている。なぜ「今でしょ!」という“言葉”がこれほどもてはやされるのか。ずばりこの“言葉”が、決断することを迷っていた日本人の背中を強烈に押す効果があったからだろう。日本が、20年間という低迷の時期を経て、今一度繁栄を目指そうとするこの時、すぐにでも“一歩前へ!”進む決断が必要である。プロポーズするかどうか迷っている“貴方”も、家を買うのを迷っている“貴方”
も、もう自分の中で結論は出ているのに、あと一歩が踏み出せない時は、「いつやるか?」、「今でしょ!」と口に出してみたいものだ。